女性体育教師への面接調査からみた学校体育のジェンダー・サブカルチャー

井谷惠子(京都教育大学)

要約

 女性の社会進出と共に女性教員の比率が増加しているにもかかわらず,保健体育教師に限ってみると,女性教師割合は過去20年間にわたってほとんど変化がみられない.
 これは,教員採用における長年の男女差別が原因であると認められる.学校体育には,男女平等な教育を推進する学校文化の流れに抵抗するジェンダー・サブカルチャーの存在が推測できる.
 本研究の目的は,高等学校に勤務する女性体育教師5名に対する面接調査を通して,体育教師社会のジェンダー・サブカルチャーについて検討することである.
 5名の女性体育教師に対するインタビューを通じて,高等学校における体育教師社会のジェンダー・サブカルチャーを形づくる要因が5点見出された.スポーツ文化の転移に関する要因として,「ジェンダー秩序」「スポーツの亜流としての女性」「官僚的組織」,学校における存在主張に関わる要因として,「学校文化における優位性への固執」「過剰な役割意識」が認められた.

キーワード:女性体育教師、男女平等、学校体育、面接調査、ジェンダー・サブカルチャー


スポーツとジェンダー研究,1:27-38,2003.